ロンドンでの英文学の研究や、
英語の教壇に立っていたこともあり、
漱石には英語のイメージがあるが、
じつは、漱石は英語より漢語を好んだ感があり、
大岡信氏によれば、創作された漢詩は、
一級品の出来が多いと言う。
漱石の漢詩好きは、
十代に通った二松舎と関係があるだろう。
二松舍に学んだのだから、
漱石の著作に「論語」や「孟子」という文字を見かけても
良さそうだが、僕の読んだ限りでは、その記憶はない。
ただ、意識的に読めば、その視点を感じることは出来る。
例えば「道草」の中には、健三(漱石)から妻への
次のような一節がある。
(この言葉の背景には、漱石の、
公金を着服した義父への腹立たしさがある)
「御前が形式張るというのはね。人間の内部はどうでも、 |