●燃料電池、宇宙に飛ぶ
大手のGE社
(ゼネラル・エレクトロニクス社)も、
燃料電池の研究に着手しています。
W.グラブは軟水器からヒントを得て、
電解質にポリマー膜を用いた、
固体高分子型の燃料電池の原型を作りました。
その後、改良されたこの燃料電池は、
アメリカNASAで推進されていた
宇宙開発に取り入れられることになります。
最初に導入されたのは、
ドッキングや船外活動を目的とした
ジェミニ計画です。
当初、軌道衛星ジェミニ船の動力源として、
太陽電池も有力視されていましたが、
シンプル性、軽さ、そしジェミニ船との
相性等から、GE社製の固体分子型の
燃料電池が搭載されることになります。
そして実際に、初めて燃料電池を搭載して
空を飛んだのはジェミニ5号からで
宇宙船を衛星軌道に乗せる時と、
ビデオとラジオの実験の際に使用されました。
●アポロ計画には、「アルカリ型」
さて、次のアポロ計画では、
70%の発電効率が見込めること、
純水素使用の副産物である水が
乗組員の飲料水として使えることから、
アルカリ型燃料電池が搭載されることになります。
ユナイテッド・エアクラフト社
(現ユナイテッド・テクノロジー社)が
担当した燃料電池は、1号から搭載され、
7号から副産物である水が
飲料水として使用されました。
トラブルを乗り越え、
コーヒーメーカー9杯分の
電力だけで、地球に帰還したのは、
とても興味深いエピソードでした。
じつは、この時のトラブルの間接的な
原因になったのが、燃料電池だったのです。
トラブルは次のようにして起こりました。
2号酸素タンクの酸素の撹拌が引き金となり、
1号と2号の酸素タンクをつなぐバルブと、
1号燃料電池と3号燃料電池の反応バルブが
破裂してしまいます。
その結果、3つの燃料電池のうち、
作動するのは、2号燃料電池になってしまい、
電気機器につなぐ2つのメインバスのうち、
メインバスBはまったく使えず、
メインバスAもわずかしか
使えない状況になってしまいました。
執筆 有限会社 鶴巻事務所
イラスト 長嶺デザイン事務所
燃料電池(はじまりから、アポロ搭載まで)1〜3 参考図書
燃料電池第2版 (高橋武彦/共立出版),トコトンやさしい燃料電池(日本工業新聞社/燃料電池研究会),世界の宇宙開発(旺文社)アポロ13号奇跡の生還(ヘンリー・クーパーJr./新潮文庫)