2008-12-16 「本居宣長」備忘録 宣長は、古事記の書かれた太古の時代、 「彼等の間では、直かな、豊かな表現は、当然、その日常会話にも 及んでいた」(P216)と考え、 「更に進んで、そういう生気のある言語表現をわが物としていた 人々が、実生活の上で、これに即した、生きた智慧を身に付けて いないわけがない」(同ページ)とした。 伝説の肉体は、極めて傷き易く、少しでも分析的説明が加えられれば、 堪えられず、これに化せられ歪むのだ。 宣長が尊重したのは、そういう伝説の姿の敏捷性であり、それを慎重に迎え、 彼の所謂「上ツ代の正実(まこと)」が、内から光が差してくるように、 現れて来るのを、忍耐強く待ったのであった」(P205) 以上、「本居宣長」(小林秀雄)より