一説では森鴎外の代表作と言われ、
実際に読んでみても興味深い「渋江抽斎」の中に、
ウナギ酒というものが出てくる。それは、
「茶碗にウナギの蒲焼を入れ、少しのたれを注ぎ、熱燗を入れ、
フタをおおって、しばらくしてから飲む」ものらしい。
抽斎にすすめられた妻の五百(いお)は、これを美味しがり、
周囲の人たちにも教えたという。
ところで抽斎は、六経を読破した上では、
「論語」と「老子」で事足りるとし、
その中でも「過猶不及」と「無為不言」を心術の掟とした。
と言っても漢熟語ではよく分からない。渋沢栄一の「論語講座」
いわゆる「渋沢論語」で、書き下し文をめくってみた。
ひとつは、「論語 先進第十一」である。
子貢問う、師と商と孰(た)れか賢(まさ)れると。
子曰く、師や過ぎたり、商や及ばずと。
曰く、然らば則(すなわ)ち師は愈(まさ)れるかと。
子曰く、過ぎたるはなお及ばざるがごときなり。