漱石のシビアな小説は、問題を浮き彫りにし、
後は読者に任せる場合が多いと思う。
ただ、「彼岸過迄」では珍しく、自意識過剰の主人公に対し、
登場人物のひとりに、次のように語らせている。
「内へ内へと向く彼の命の方向を逆にして、 外にとぐろを捲き出させるより外に仕方がない。 外にある物を頭へ運ぶために眼を使う代わりに、 天下にたった一つで好いから、 |
漱石のシビアな小説は、問題を浮き彫りにし、
後は読者に任せる場合が多いと思う。
ただ、「彼岸過迄」では珍しく、自意識過剰の主人公に対し、
登場人物のひとりに、次のように語らせている。
「内へ内へと向く彼の命の方向を逆にして、 外にとぐろを捲き出させるより外に仕方がない。 外にある物を頭へ運ぶために眼を使う代わりに、 天下にたった一つで好いから、 |