鳥巻メモ

https://tsurumaki-office.com/

『白痴』のワンシーン

黒沢明監督は
海外の小説を題材に、
数本の映画を撮った。


蜘蛛巣城』や『乱』
シェイクスピアから。


こちらは、何かの雑誌を見て
「言われてみれば、そうだな」と思った。


ま、それくらい、
脚本で大きくアレンジされている。


それに対して、『白痴』は
原作のあら筋がそのまま踏襲されている。


とはいっても、
舞台は、ロシアから
日本に移されているわけで。


そのため、
あきらかに戸惑ってしまう場面がある。


たとえば、
エゴイズムの象徴として描かれている
ロゴージンの暗い家の様子だ。


原作では
ロシア正教の分派を思わせる雰囲気の中に、
年老いた彼の母親がいるのだが、


映画では
仏間にいる母親が、主人公に仏前の御供えを
差し出す場面に置き換えられている。


この場面が、
どうも浮き立って見える。


ならば、
いっそのこと、原作の描写を残し、
ロシア的な怪しい雰囲気にした方が
面白いような気が、しなくもない。


原作者にインスピレーションを与えた言われる
ホルバインの絵を飾っても、ええわな。