鳥巻メモ

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燃料電池(はじまりから、アポロ搭載まで)1


燃料電池の はじまり  


最近、話題の燃料電池


その基本原理を初めて証明したのは、
イギリスのW・グローブとされています。


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ある日、水の電気分解の実験をしていたグローブは、
電気を切った際に、電流が逆流することに気づきます。


そして、電気により、水が酸素と水素に分解されるのなら、
逆に、この2つの気体を合わせれば、電気が起きると
考えたのです。実際、1839年に、
彼は次のような装置を雑誌に発表しています。


まず下の4つの容器を見てください。
それぞれの容器には、1組みのチューブが逆さまに入っていて、
一方には酸素、もう一方には水素が入っています。
4つの容器には、希硫酸と、
1組みのチューブが逆さに入っています。
それぞれのチューブには、水素と酸素が入っています。


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一方、容器はもう1つ用意され、
こちらのチューブには、水素と酸素が入っていません。
この装置を使うと、図のように、
4つの容器に入ったチューブの酸素と水素は、
2対1の割合で、消費されます。
逆にもう1つの容器のチューブ内では、
1対2の比率で、酸素と水素が発生したことが
確認されます。


つまり、グローブは
4つの容器に入った化学物質が
反応しあうことで電気が起こり、
もう1つの容器で、
水が電気分解されたことを証明したのです。

この雑誌の中で、グローブは、
「水素と酸素による発電」という、
燃料電池の基本中の基本を発表したわけですね。



●モンドが作ったマトリックスの原型


その後も、欧米の数々の化学者たちによって、
水素と酸素による発電の研究は進められましたが、
残念ながら、グローブの実験から
長いあいだ、蒸気機関や、
その後のガソリンエンジンの隆盛により、
燃料電池が社会の表舞台に
出ることはありませんでした。


ただ、その間にも技術上の改善は
静かに進みました。
今日の燃料電池の基礎となる
いくつかの重要な工夫が考案されています。


19世紀末、世界最大のソーダ会社の
経営者であったL・モンドは、
自社の作ったガスを燃料電池にも
応用できないか研究しました。


この研究は、残念ながら、
実用化までは至らなかったのですが、
その際の、電解質を含ませた多孔液の板と、
触媒である白金を合わせるというアイデアは、
現在の燃料電池に採用されている
マトリックスの原型となりました。


ちなみに燃料電池(Fue cell)という呼び方は
モンドにより名づけられたものです。


(つづく)


執筆   有限会社 鶴巻事務所
イラスト 長嶺デザイン事務所