村上春樹がレイモンド・カーヴァーの翻訳をしなかったら、
一般の読者はカーヴァーを知ることは、なかっただろう。
少なくとも、そのおかげで、僕はカーヴァーを知ることができたし、
今でも彼の短編を愛読している。
そして、もうひとつ、スコット・フィッツジェラルドの翻訳も、
村上春樹の大きな仕事だと思う。
日本では未発表の短編や、スコットや
その妻ゼルダの人物像を描いた論文等の翻訳にくわえ、
名作「グレイト・ギャッビー」の新訳も行っている。
従来の野崎孝 訳に比べ、言葉遣いが新しいし、
日本で最もポピュラーな作家による翻訳、ということで、
村上訳が新たな読書獲得に果たした役割は、かなり大きいのではないだろうか。