「パイドロス」その2


エジプトのナウクラティス地方に
テウトという神様がいた。


文字を発明したテウトは、
エジプト全土に君臨しているタモスのところに行き、


「王様、この文字というものを学べば、エジプト人たちの知恵は
たかまり、もの覚えがよくなるでしょう」と言った。


それに対し、タモスは、こう述べた。


「人々がこの文字というものを学ぶと、記憶力の訓練が
 なおざりにされるため、その人たちの魂の中には、忘れっぽい
 性格が植えつけられることだろうから。


 彼らは、書いたものを信頼して、ものを思い出すのに、自分以外
 のものに彫りつけられた印によって外から思い出すようになり、
 自分の力によって内から思い出すことをしないようになるからである。



 彼らはあなたのおかげで、親しく教えを受けなくても もの知りになるため、
 多くの場合はほんとうは何も知らないでいながら、見かけだけは
 ひじょうな博識家であると思われるようになるだろうし、
 また知者となる代わりに知者であるという うぬぼれが発達するため、
 つき合いにくい人間となるだろう」「パイドロス」P134〜135